主な業務内容

業務の概要

一般社団法人日本鉄道施設協会では、鉄道施設技術を多くの技術者に伝え、共有し、先人の技術者の技術を伝え記録に残していく業務や、協会の公共性を有効活用する取組みを行っています。主に保安事業、技術振興、調査研究、公益出版の4つに分類されています

保安事業

当協会では各鉄道会社から資格認定業務を委嘱され、資格認定機関として運転適性検査の実施、医学適正検査結果の確認、そして資格講習会を行い、資格認定証を発行・交付しています。
資格認定は、工事管理者、軌道工事管理者、軌道作業責任者、線閉責任者等で、その取得のためには新規や継続と言った講習会を受講する必要があります。(参照)保安講習会サイト
保安講習事業の基幹システムである「保安講習会管理システム」は、各地方事務所別でシステムが異なりますが、利用者の申込み手続きの簡素化等サービスレベルの向上に取組んでいます。

省令10条教育・訓練

鉄道事業者は、鉄道の安全な輸送、及び安定的な輸送の確保を図るため、鉄道の運転や保守に従事する作業員へ必要な知識及び技能を教育・訓練するよう国の法律で定められています。(国土交通省令第10条)
当協会は資格認定と同様に上記の教育・訓練を委嘱され、保安に関係する必要なルール等についての教育訓練を行っています。
当協会は、長年にわたって、工事管理者、重機運転者、列車見張員等の各鉄道事業者が定めた資格講習会、および省令10条教育等を全国で実施しています。現在では、年間講習回数は約2500回、年間受講人数は延約100,000人に達しています。

技術振興

当協会の技術振興事業は、古くは1954(S29)に行われた「エカフェ保線機器展示会」への協力を国鉄から依頼されたことに始まり、以来、数々の講演会、発表会、研究会を通じて鉄道施設技術の振興に協力をして来ました。JR発足以降は、当協会が主体となり開催しています。
線路関係の各種資格については、公的な資格として確立されていない状況であり、関係会員からの要請を受けて、線路技術及び軌道工事の公的資格創設についての支援に取組んでいます。その一つとして鉄道事業者向けの公的資格への足掛かりとして鉄道技術検定(保線)を民間試験として実施し全国の鉄道事業者へ展開しています。
外国人技能実習制度に「軌道保守整備作業」が職種追加されたことから、資格取得のための評価試験実施機関になっています。
各種表彰や叙勲は、鉄道施設の従事員のモチベーション向上のために、支部等との連携を図り、より多くの推薦、確保を目指します。(参照)表彰サイト

研究発表会の開催

全国各社の仕事や事故防止の工夫・取り組み、研究開発の成果等を、全国の技術者が共有し、鉄道の安全性向上と専門技術の向上が図れるよう研究発表の場を提供しています。
総合技術講演会(保線、土木工事施工、調査・計画、建造物検査の各部門)及び鉄道施設技術発表会並びに用地・協議業務研究会の名称で開催し、全国から選抜された発表者が演壇に立ち、貴重な研鑚の場として定着しています。

講演会・見学会の開催

工事現場における事故防止の取り組みや、新技術を実地に体験できる見学会、各方面の専門家を招いて安全や環境問題等の見識を広める講演会を、本部や全国各支部主催で毎年開催しています。

調査研究

日本保線協会設立時から調査研究業務に関与し、これまで国鉄、鉄道公団(現鉄道運輸機構)、JR各社等から委託を受けて調査研究業務に係る委員会等の運営業務を実施しています。

技術基準の制定

調査研究技術基準の制定・改正のための調査研究

国の技術基準は、鉄道における事故や災害を防止することにより、利用者の生命を守る安全の根幹として制定され、常に高い水準が維持されるよう必要な改正が行われています。その改正作業には、技術開発の動向や、鉄軌道事業者の実態を把握し、これらを検証することにより、適切な技術基準を可能とするもので、当協会は、国鉄時代から基準の変遷経緯を熟知しており、また専門技術に精通した全国の会員関係会社のネットワークを活用して、技術基準の制定・改正に資するための調査研究を実施しています。

鉄道施設に係る専門技術を必要とする調査研究

鉄道施設の経年による変状調査及び保全方法、災害復旧方法の検討等専門的技術を必要とする調査研究は、技術基準と同様に、長年の経験を生かした調査・資料収集が重要です。
当協会は、鉄軌道事業各社からの委託を受け、専門家のご指導を得てこれらの調査研究を実施しています。

日本工業規格の原案の管理

当協会では、レール、継目板など25種類のJIS原案を管理しています。(2021年現在)
JISの原案管理の業務は、国際規格ISOとのダブルスタンダード解消に向けた取り組みを含め、製造者や使用者と連携を取ながら進めています。
協会がJISに関わったのは、1956(S31.)年6月に軌道パッドJIS制定への協力を理事会で承認したことに始まります。当時の鉄道用品の品質管理は、1952(S27)年2月に設置された日本国有鉄道使用物品企画調整委員会が行っており、1953(S28)年に軌道パッドの規格を決定したと記録があります。
その後、1956(S31)年6月に、当協会が始めて工業技術院から軌条パッドのJIS原案作成を正式に受託しました。
一方、JRSは、1964(S39)年4月に制定(物品等標準化管理規程総裁達第171号)され、そのJRS改廃の情報は「鉄道線路」に掲載され情報の提供を行ってきました。JR発足に伴いJRSとして管理されていた鉄道施設用品は、JISに統合されたものもあります。

公益出版

機関紙及び年報以外の刊行物としては、昭和35年に「日本鉄道構造規程及び解説(案)」(委託発行)、「テキスト分岐器と曲線整正」及び英文カタログを発行したことが記録されています。それ以降、技術の伝承のため線路作業、線路工学、分岐器の構造と保守など多数の保線及び工事関係図書を発行してきました。
中でも「鉄道土木構造物の維持管理」は、平成10年度交通図書賞奨励賞を受賞しました。
また、協会は鉄道施設関係の文献資料を収集し、会員への閲覧に供しています。

会報の発行(毎月1回)

鉄道施設の安全に寄与するために必要な専門知識、専門技術を内容とする月刊誌「施設協会誌」を毎月発行しています。最新情報をカラーグラビアで紹介するほか、企画部門、用地・協議部門、土木部門、線路部門、工事と安全部門に区分し、鉄道施設に関する技術開発、研究成果などを論文形式で掲載しています。

技術図書の出版

鉄道施設に係る専門知識、専門技術を内容とする図書を出版販売しています。
国の技術基準に解説を加えた「解説鉄道に関する技術基準(土木繼)第三版」、交通図書賞を受賞した「災害から守る・災害に学ぶ」、過去の鉄道事故事例と対策をまとめた「安全への道しるべ」、交通図書賞奨励賞を受賞した「鉄道土木構造物の維持管理」、「写真で見る線路管理の手引き一検査と対策-」、「分岐器の構造と保守・増補改訂」など、現在約40冊の図書を出版販売しています。

機関誌等の発行とその歴史

会員の所属する業種により機関誌等を発行してきました。

鉄道線路

創立直後、機関誌発刊について決定され、昭和28年7月「協会ニュース」として創刊し、毎月1回発行することになった。当初の発行部数は3,500部であった。 その後、名称を「保線協会ニュース」、そして「保線ニュース」と改め、5巻6号(昭和32年6月)から「鉄道線路」と改められた。

鉄道土木

昭和34年1月に創刊された。創刊当初は、一般刊行物として発行し頒布した。その後、保線協会が施設系技術者全体の団体として協会に改組されたことを契機として、昭和37年12月から、「鉄道線路」のほか「鉄道土木」を機関誌として発行することとなった。

鉄道施設事務

昭和38年8月から施設事務関係者も加入することになったことにより、「鉄道施設事務」を機関誌として合わせて発行することとなった。

鉄道工事と安全

昭和42年8月より、工事指揮者等の安全教育を目的に、「鉄道工事と安全」を定期刊行物(タブロイド新聞版)として新たに発行した。

日本鉄道施設協会誌への統合

国鉄改革を契機として、上記①~④の機関誌等は昭和62年1月「日本鉄道施設協会誌」(以下「協会誌」という。)に統合されて現在に至っている。
上記「保線ニュース」の臨時増刊として「保線年報」を昭和30年2月より発行したが、その後、協会の改組に合わせ1963年号(昭和39年2月発行)から、「施設年報」と名称の変更を行い、国鉄改革時の1986年号(昭和62年2月発行)まで毎年発行した。
その内容は、国鉄、日本鉄道建設公団、民鉄、協会等の年間の実績その他を掲載したものである。また、「構造物設計資料」を昭和39年12月に創刊号として発行して以来、国鉄改革直前の昭和62年3月の最終号まで、国鉄構造物設計事務所監修のもとに、年4回合計89号を発行した。

英文版の会誌及び年報も、昭和59年まで発行した。
➀Permanent Way (英文版会誌):昭和33年発刊、年4回発行
②Railway Track and Structure ln Japan(英文版年報):昭和37年発刊、4年毎発行
【創立50周年特別記念号より】